元仮設ウイルス学研究室

ようこそ、シマナイチャーのホームページへ
2019.4をもちまして大学を退官いたしました
大学のサーバーにホームページを移設しました
一部専門的内容を含みますが、日常の一般的内容にシフトしています

<< September 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

<< 最大限の努力を | TOP |

2020.04.24 Friday

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています


| - | - | -
2020.04.24 Friday

ウイルス検査の話



患者さんが「ある感染症」に罹患してるか否かを決定する(確定診断)には、お医者さんが患者さんを診立てて決める場合と科学的データを元に判断する場合があります.

前者のやり方は大抵の場合困難があります.

風邪のような症状を呈する感染症はいくらでもあるし、下痢だって、頭痛、腹痛、発熱だってそうです.

症状だけで「ある感染症」か「それ以外の病気」かをピタリと当てられる医者はこの世に一人もおりません.

その困難の中でも、ほぼほぼいけてる診断基準というのもあります.

例えば、「はしか」という感染症、専門的には麻疹(ましん)、measlesなどと言いますが、この病は臨床所見だけで見分けられることが多いです.

まず、全身症状の発熱が二度に分けてあります.二度めの発熱時に発疹が現れる.口の中、ほっぺたの裏側の奥に白いツブツブ(コプリック斑と言います)が揃えば、「やや、これははしかじゃよお母さんふむふむ」と胸を張って言っても概ね大丈夫.

こんなわかりやすい病は稀で、ほとんどが紛らわしい.

世の中紛らわしいことがいっぱいであります.

そんなモヤモヤ感を晴らしてくれるのが「臨床検査」です.

病院の中で、あまり人前に現れない得体の知れないオタクっぽい白衣姿の人たち、あの人たちが臨床検査技師のライセンスを持つ集団です.

患者さんから色々なデータを取ったり、検体を採取して、肝機能やら尿蛋白やらを調べる高等テクニックを持つ集団です.

レントゲンだけは別のライセンスになっていますが患者さんの内部情報を画像でとる技師さんも軍団の一人です.

警察の科捜研みたいなもんですね.

それで、ウイルス感染症の場合は大きく分けて、ウイルスそのものを見つける検査と、感染によってウイルスが残した痕跡を証明する検査があります.

テレビで盛んに叫んでる「PCR」検査はウイルスの遺伝子を見つける検査です.

PCRはDNAを目に見えるほど増幅してその存在を証明することができる画期的な検査です.

しかし、今回の敵コロナウイルスの遺伝子はRNAなのでPCRでは増幅できません.そこで、逆転写酵素というRNAからDNAに転写する都合のいい酵素処理を行ってからPCRを行うという裏技が用いられます.RT-PCRと言います.

まあ、これだけで痕跡程度のわずかなウイルスRNAを莫大な量に増やして証明することができるわけですが、もっとスマートにやろうというのがリアルタイムPCRというやつです.

これが今世界中で必死のパッチで行われてるウイルス検査です.

この遺伝子検査は敵の特徴的な遺伝子塩基配列さえわかればすぐにでも実施できるという強みを持っています.

がしかし、そこいらの町医者が実施できる方法ではないことは確かです.まあ、実験が好きで、のたうち回ってる患者を放っても大丈夫な医者ならやれますが.

PCRやリアルタイムPCRには高価な特殊装置と高度な実験技術が必要なのです.

では、インフルエンザの時みたいに町医者がチョチョイと実施可能な方法がないのかというと、それは間も無く市場に出回るはずです.

原理はインフルエンザの検査と同じなのでアレとコレをチョチョイと変えると出来上がります.

ただこれはウイルスが喉の奥、鼻の奥の粘膜表面で精力的に増殖して、ここにウイルスいっぱいおるでえという時期にしか実施できません.

これはPCRもそうです.

多分、PCRの方が感度は高い.

ただ、ウイルスが肺の奥にしかいないとか、感染したばかりでウイルス量が少ないとき(ウインドウピリオドなどと言います)はいくらやっても無駄.

喉からいなくなったけど、どうなの?というときはどうする?

これは、感染した身体が反応して出すシグナルをキャッチするのです.

感染症の場合は感染して症状がなくなった後のことなので、患者さんを直接診てるお医者さんの関心事ではないのですが社会的にはとても重要な情報を与えてくれます.

病原体に身体が反応して出すシグナル色々あるんですが、ここで言いたいのは「免疫反応」です.

免疫反応、ぶっちゃけていうと抗体というアレです.

もう一つ、細胞性免疫というのもあるんですが、それは彼方に置いといて、今は抗体の話.

抗体にはいくつかの種類があります.

IgM, IgG, IgA, IgE, IgDなどです

ここではIgMとIgGに絞って話を進めます.

ウイルスに感染すると、最初はウイルス特異的なIgM抗体が作られます.

次いでIgGという抗体が作られます.

どちらもウイルスに対してオーダーメードされた今まで体になかった抗体です.

この抗体を検出できれば、いろんな情報が得られます.

IgM(+), IgG(-): 感染してから、それほど時期が経ってない.

IgM(+), IgG(+): 上の時期から、しばらく経った.

IgM(-), IgG(+): 更に時期が経った.あるいは、かなり経った.

この抗体を検査できるキットも出てきます.

いずれにしろ、需要がなければ検査のキットは作られません.

需要を見越して作ったりもするのですが、いくら良いもの作っても売れなければ会社が大損するだけですから.

今回は相当な需要があるので、検査キット、治療薬、ワクチンの開発が各方面で精力的に行われています.

玉石混淆ですが、それらの中からいいものが選択されて残るのは世の常ですね.

2020.04.24 Friday

スポンサーサイト


09:22 | - | - | -

コメント

コメントする









▲top