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2006.12.20 Wednesday

ノロウイルスとの戦い

最近話題のノロウイルスですが、今シーズンの流行は特に大きいようです。

 ノロウイルスはカリシウイルス科ノロウイルス属に分類されるウイルスです。他のウイルスに比べて小さいことから、分類が確定するまでは小型球形ウイルスと呼ばれていました。
 細菌性の嘔吐下痢症は夏期に流行しますが、ウイルス性の嘔吐下痢症は冬期に多発します。以前はロタウイルスによる乳幼児冬期下痢症が有名でしたが、詳しい研究によりカリシウイルス科やアストロウイルス科のウイルスによる嘔吐下痢症も冬期に多発することがわかってきました。
 今までの研究で、ロタウイルス、アストロウイルスは培養細胞に感染させて増やすことに成功していますが、ノロウイルスに関してはまだです。従って、どうすればウイルスの感染性を失わせることが出来るかを調べる研究が出来ないのが現状です。もし、どうしても調べるならば加熱や消毒処理を行った後にボランティアが試しに飲んで感染するか否かを調べるしか手だてがないのです。他の動物に感染するカリシウイルスの不活化条件をノロウイルスの不活化条件とするというのも1つの考え方ですが、ノロウイルスを直接使って求めた条件ではないのではっきりと言えないのが現状です。ノロウイルスに対する治療薬や予防ワクチンも未開発です。
 ノロウイルス感染症の主症状は嘔吐と下痢で、発熱や腹痛が認められることもあります。また、一部の患者さんでは筋痛、頭痛、咽頭痛等が認められることもあるようです。ボランティアを用いた感染実験が行われたことがあり、飲み込んでから発症するまでの期間(潜伏期間)は1-2日で、症状を呈していた期間(有症期間)が1-2日だったそうです。やはりボランティアを用いた感染実験で、一度感染して回復した後にも再感染が起こったり、高い抗体価を保有していても再び感染することも明らかになっています。
 ノロウイルスはお腹の中で増えますが、排泄された後は一切増殖しません。つまり、便や吐瀉物に混じって排泄されたウイルスは下水、河川、海洋中でどんどん希釈され、時間と共に死んでいきます。しかし、牡蠣やシジミ、赤貝、アサリ、ハマグリ等の二枚貝は餌となるプランクトンを食べる為に何十リットルもの海水を1日に濾しとります。その際に僅かに漂っているノロウイルスも濾しとられ貝の体内に濃縮蓄積されるのです。それを人間が生で食べると感染してしまうのです。牡蠣は酢牡蠣のように生、あるいはフライのように半生状態で食されることが多いので感染源となります。赤貝も生で食べるので注意が必要です。新鮮だから大丈夫ということは全く言えません。実際に下水や下水処理場からの放流水にノロウイルスが排出されているかはここを見て頂ければわかると思います。
 ノロウイルス感染症は食中毒としての感染例以外に人から人への水平感染でも発生します。最近、病院や老人施設等で起きている集団感染例はまさにそれです。健康な人がノロウイルスに感染しても短期間で軽快するのですが、入院患者や老人など抵抗力の弱い方が感染すると死亡する例もあるようです。

 テレビで某機関の人?がノロウイルスに感染した人が床に吐いた吐瀉物(ゲロ)の対処法を解説していました。そういうシチュエーションはあまりないかも知れませんが、参考にはなると思います。簡単にまとめてみると次のようなことです。

 解説では塩素系漂白剤で処理する方法を紹介していました。実はノロウイルスなどの腸管から感染するウイルスの多くは塩素消毒に対して強い抵抗性を持っています。しかも下痢便や吐瀉物には色んなものが含まれているので、それが殺菌成分を弱めるてしまうのでノロウイルスは更に抵抗性を増します。屎尿に含まれているアンモニウムイオンは次亜塩素酸と結合してクロラミンになり殺菌力は激減します。したがって、ノロウイルスを殺すには理論上の濃度より濃い次亜塩素酸ナトリウムを使う必要があります。

●先ず、服装は予防の為に上に何かを羽織る。家庭では予防着や白衣なんてありませんから前掛けや割烹着を着用。マスクとシャワーキャップを付けましょう。手袋は食器洗いのゴム手で良いです。念のためにゴム長も履きますか。家庭で出来るとっさの防護服はこんなものでしょう。

●新聞紙を1枚ずつにして揉んで下さい(染み込み易くするため)。紙おむつや紙タオルでも良いです。

●バケツに大きめのレジ袋(穴の空いていないもの)をかぶせる。

●別のバケツに漂白剤を薄めておき(出来るだけ濃いめ、40-50倍くらい)、ぞうきんあるいはタオルを浸しておきましょう。

●まず、新聞紙で吐瀉物や排泄物を外側から囲み込むように拭い取り、汚れた新聞紙はレジ袋の回りに汚れを付けないように袋の中に捨てる。このレジ袋は漏れないように口を閉じて燃えるゴミとして捨てる。ここで出来るだけ吐瀉物や排泄物を取り除きましょう。

●次に薄めた漂白剤を染み込ませた雑巾あるいはタオルを汚れが付着していたエリアを中心に外側も含めて覆う。この状態で2時間近く放置する。10分では短すぎる。

●前掛けやシャワーキャップ等、捨てても良いものは先ほどの汚れた新聞紙と一緒に捨てる。再利用したいもの、バケツや衣類等は400-500倍に薄めた漂白剤に一晩浸けてから洗う。

●絨毯や畳等は汚れを可能な限り拭い取ってから、塩素消毒後にアイロン等で加熱消毒する。その後、出来れば絨毯は洗いに出す。畳は業者に加熱処理をしてもらう。

★感染を予防するチップス
流行期は生ものを出来るだけ食べない。帰ってきたら先ず手洗いとうがい。出来れば入浴して着替える。外でも機会があれば頻繁に手洗いとうがい。手洗いは丁寧に。手を洗う時は蛇口のコックも洗い、水で良く濯いでから自分の手も濯ぎコックをしめる。出来れば肘まで洗う。紙タオルを使い捨てにした方が良い。不特定多数の人が触るもの(手摺、ドアノブ)に極力触れない。発症している人が入浴した湯船につからない。流行時期は家庭に発症者がいなくても湯船にキャップ二杯くらいの塩素系漂白剤を入れておく。手洗いや洗面所ではタオルやコップを共用しない。まな板や食器類は洗いと濯ぎが終わったら熱湯をかけて日光に当てる。特に、使用済みのふきん類はバケツに集めて熱湯で薄めた塩素系漂白剤に一晩浸けてから他の洗濯物と別に洗って日光のもとで干す。調理場での衛生管理は非常に重要です。汚染した手、まな板や包丁などの道具を介して野菜サラダ等の生ものが汚染されて感染することは十分考えられますから注意して下さい。調理者がウイルスに感染していることが最も危険です。調理場スタッフの健康管理は徹底して下さい。スタッフの家族が感染していても危険です。
2020.03.31 Tuesday

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