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2014.02.26 Wednesday

生ガキで肝炎



お笑いの上○恵×子がA型肝炎に罹患したニュースが流れました.

生ガキの喫食が原因だと考えられています.

おそらく、回復後はこれをネタに笑いを取る事でしょうね.

カキ等の二枚貝は大量の水から水中プランクトンを漉し取り、それを栄養源としています.

其の際、水中を漂っている「ウイルスが付着した微粒子」も体内に濃縮してしまうのです.

当然、其の貝を生食すれば感染の可能性があります.

其の「ウイルスが付着した微粒子」って何よ.

それは「アナタのウンチ」から発生しているのです.


牡蠣を食べたらA型肝炎になるのか?

A型肝炎ウイルスは肝臓で増殖し、胆汁に含まれて腸管に入り、便と共に排泄されるので、下水、河川、果ては海が汚染されます.

汚染水域で生育する二枚貝は全て汚染している可能性がありますが、カキは生で食べる事が多く、しかも内蔵(中腸腺)を含む全体を食べるので感染しやすいのです.

赤貝や青柳は生食しますが、内蔵は取り除くので感染し難い.

アサリやハマグリ、シジミ等は加熱調理するので感染源になりにくい.

ちなみに、サザエやアワビは海草を食べるので汚染され難い.

此の感染原理、嘔吐下痢症の大原因になってるノロウイルスと其の仲間達の感染様式と良く似ています.

A型肝炎、昔と今

便所が汲取式全盛だった頃は、屎尿を肥料として利用していた時期もありますが、農業様式の進歩に伴い屎尿は利用されなくなり、経済発展の端境期には海に運んで投棄していたこともあります.

現在は都市部を中心に水洗化が進み、屎尿が家庭排水とともに下水に流入しますが、下水処理場で処理され河川や海に放流されます.

下水処理場でウイルスが完全に除去されるか否かは処理場の能力次第で、私共がノロウイルスで調べた限りでは放流水中に少なからずウイルスの存在が認められたので、A型肝炎ウイルスも同様だと思います.

過去に話を戻すと、特にプランクトンを大発生させてカキを太らせる目的で、屎尿がカキの養殖棚付近にまかれていたことがあったようです.

そのため、カキがA型肝炎ウイルスに汚染し、それを喫食して罹患が発生、続いてノロウイルス感染症同様に患者が市中にウイルスを拡散させ二次的拡大が起きたという説があります.

汚染された水、食品を介した食中毒、モノからヒト、ヒトからヒト、飛沫など多様な感染様式が考えられます.

ただ、このウイルスは子供に感染すると殆ど症状を呈さず、終生免疫が成立します.従って、衛生状態の悪かった昔の日本では、殆どの感染が年少期に起こり、成人の感染、すなわち患者の発生は然程多くはなかった(今よりはずっと多かったでしょうが)のです.

現在は殆どの人が感染せずに成人に達しているので、これらの方々が汚染地域(東南アジア等)に旅行した際に罹患する「旅行者感染症」として重要視されております.

また、汚染地域から輸入された汚染食材による感染も公衆衛生上の問題です.

A型肝炎の原因と症状
肝炎には色々な原因があります.

皆さんが良く知っているのはアルコール、すなわち酒の飲み過ぎですが、他に生活習慣、薬物や免疫疾患、ウイルス感染等で肝炎に罹患します、最も多いのはウイルス性です.

肝炎を引き起こすウイルスは沢山あるのですが、其の中でもA〜E型肝炎ウイルスの5種類が重要です.

B、C、D型肝炎ウイルスは血液を介して感染するため血清肝炎と呼ばれており、A型肝炎ウイルスは水や食品を介して経口感染し、流行しやすい事から流行性肝炎とも呼ばれておりました.

また、E型肝炎ウイルスも食品等を介して経口感染するのですが、他の動物(ブタ、イノシシ、シカなど)も保有動物となる事から人獣共通感染症の原因としても捉えられています.

さて、A型肝炎に話を戻しましょう.

A型肝炎は経口的に感染した後の約一ヶ月間は無症候で、やがて肝臓で増えたウイルスは血液や胆汁中に現れ、便にも出てきます.

ウイルスが出現してくる頃から発熱やだるさ、食欲不振、悪心、嘔吐等の症状に伴い黄疸が認められるようになり、血清中のALTが高い値を示します.

やがて、ウイルスに対する免疫が出来るとともにウイルスは排除され、1〜2ヶ月で症状は消失して軽快します.

ほとんどが終生免疫ができて、その後二度と罹患しません.

子供の感染では無症候のまま終わる不顕性感染が多いのも特徴です.

一方、B型肝炎の感染経路は血液感染もしくは母子感染で、母子感染では慢性感染になるケースが少なからずあります.

C型肝炎は主に血液を介して感染し、母子感染は少なく、多くが慢性化しやすい.

また、B、C型肝炎の慢性感染では慢性肝炎に続いて、肝硬変、肝癌となりやすい.

致死的、重症・重篤的ではない予後良好の感染蔵から考えるとA型肝炎は然程恐ろしい病気ではありませんが、感染が広がりやすいと云う点では社会的・公衆衛生学的に重要であります.

A型肝炎の予防

A型肝炎は予後良好なのですが、1〜2ヶ月の有症期間を考えると罹らないに越した事はありません.

罹らないためには感染しないこと、すなわちウイルスに汚染した飲食物を生で口にしない、汚染したものを触らない、触ったら良く洗い落とし口に入らないようにする.

また、感染している人は感染源となり得ますから食品を触るような作業はしない、良く手を洗い、触れるものを汚染しないように注意する.

調理場で働いている人は充分気をつけて下さい.

しかし、困るのは症状が出る前に便にウイルスが出てくることです.

知らないうちにウイルスをばらまいている可能性があります.

じゃあ、ウイルスに感染しない体質にすれば良いのじゃないか.

そんな体質はありません.

幸いな事に、優秀なワクチンが開発されており、罹患を効率的に防ぐ事が出来ます.

罹り難い体質と云えば、そう言えるかもしれません.

リスクのある方、他人に感染させると問題になる方(医療、学校、保育、食品、介護、軍事関係者など)には接種をお薦めします.

A型肝炎ウイルスの消毒

だいたい、便に出てきて感染が広まるウイルスは頑丈です.

A型肝炎ウイルスは弱い酸、低い高温(何のこっちゃ)、洗剤で死にません.

弱い酸とは「お酢」程度、低い高温とは「60度」程度です.

すなわち、「酢牡蠣」や内部が半生の「カキフライ」は何ら安全性の保証はありません.

10分以上の煮沸や塩素系消毒薬、強力な紫外線や放射線照射では殺す事が出来ます.

おいおい、そしたら旨い牡蠣は喰えねえじゃん.

でも(まあ)大丈夫

スーパーで「生食用」として売られているカキは(まあ)大丈夫だと思います.

カキはウイルスに感染しているわけではなく、体内に蓄積しているので、「生食用」は其れを吐き出させる処理が行われているのです.

海から穫ってきたカキを紫外線照射を行って常に無菌的状態を保った海水中で飼育する事で、体内に貯まったウイルスを吐き出させているのです(吐き出したウイルスは紫外線で殺される).

その間、カキはエサも摂取できない事になりますから味は多少落ちるかもしれません.

また、其の様な飼育を行っても完全に0%にすることはできないようで、僅かながらウイルス陽性の個体はあるようです.

運ですね、賭けですね、確率は非常に下がりますが....リスク・ゼロではない.

しかし、牡蠣を絶対食べなくても、他の感染経路からのリスクもあるわけですから妥協点として仕方が無い.

元を正せば、やはり我々のウンチから来ているものですから強く抗議は出来ない.

やっぱり、リスクのある人、感染したら業務上困る人はワクチン接種ですね.

2019.07.15 Monday

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