元仮設ウイルス学研究室

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2011.08.14 Sunday

マラリアをやっつけろ

泳いでマラリアを撲滅せよ
 12月3日に全世界で水泳をしてマラリア対策への関心を盛り上げようということ。



 マラリアは最も重要な感染症の一つで、蚊がマラリア原虫を媒介することで広がる。マラリアというと、熱帯病と捉えられているが、実は温帯でも流行することが出来る。原虫は特定の蚊で媒介され、媒介蚊が生息できればどこでも流行可能であるが、多くの流行地が熱帯に位置している。感染によって誘導される免疫ではマラリア原虫を排除できないので、はしかのように自然治癒しない。抗マラリア薬で治療することはできるが、治療後も再び感染する。ワクチンは未だ開発中である。

 マラリアの制圧は困難を極めているが、マラリアを根絶できた地域はある。例えば日本の本州、沖縄を含む南西諸島である。特に、亜熱帯沖縄ではマラリアの被害はひどかった。これらの地域では媒介蚊を退治することによって病気を制圧できた。しかし、大陸に位置する流行地域では蚊を駆逐することは不可能である。蚊は種類によって生息条件が異なるから、生息環境を変えることは生息数を減らすことにつながるが、環境破壊になりかねない。

 消極的な方法であるが、ヒトが蚊に刺されないような努力も重要である。ディートなどの忌避剤は緊急的には役に立つ。また、蚊によって、吸血行動をとる時間帯は蚊帳に入るなども一つの方法。とくに、マラリア原虫が血液中に存在する患者や慢性感染のヒトが蚊に刺されなければ、原虫を持った蚊を少なくできる。抗マラリア薬を予防的に使うこともできるが、経済的な理由や副作用の関係で飲み続けることは出来ない。

 アメリカ軍がベトナムで枯れ葉剤を使ったように、流行地一帯に殺虫剤を徹底的に散布する方法はどうだろうか。このような殺虫剤の使用法には色々と問題がある。蚊が薬に耐性になってしまうこと、経済的なこと、人体や動物に対する毒性、他の昆虫への影響などの理由で、殺虫剤の闇雲な散布は緊急的、かつ限定的な使用にとどめなければならない。しかし、殺虫剤は使い方によっては上記の問題を緩和することが出来る。

 最近、ネット(網)に殺虫剤を染み込ませて、屋内に吊るす方法が提唱されている。網を窓枠などにはめて、蚊の侵入を防ぐ方法は日本では有効であるが、隙間だらけの家屋に居住する途上国では意味はない。しかし、そんな隙間だらけの家屋でも網の使い道がある。蚊は吸血後に何処かにとまって休憩する性質を持っている。殺虫剤を染み込ませたネットを部屋の隅にでも吊るしておくと、吸血した蚊がそれにとまって休息する。薬剤浸透ネットにとまった蚊は、足先から薬が効いて死ぬ。こうすることで、原虫を保有するヒトから吸血した蚊の多くが死に、蚊の原虫保有率が減る。これによって、マラリア原虫の循環効率が悪くなる。しかも、この方法は他の蚊媒介性感染症の対策にも使える。特に、ヒトとカの間だけでサイクルするデング熱などにも有効である。

 殺虫剤を練り込んだプラスチックで製造された専用のネットが販売されているが、途上国では高すぎて使えない。そこで、普通の安いネットを殺虫剤溶液に浸して乾かす方法が考えられた。この方法は簡単で、住民レベルでも実施可能である。何れにしても、ネットを使う方法は効果がすぐに現れないことが予想される。永続的に継続させることがこの方法を成功させるのに重要である。

今回のキャンペーンは薬剤浸漬ネットによるマラリア制圧を支持することが目的。

 残念なことに、セネガルで行われている同計画のフォーローアップ調査で、蚊帳を導入した初期は導入前の10%以下まで患者数が減少したが、その後急激に増加し80%以上に増加したことがわかった.

 蚊帳にしみ込ませた殺虫剤はピレスロイド系の薬品で、日本でも家庭用殺虫剤に使われている.この殺虫剤に耐過できる蚊の割合は計画開始前に8%であったが、患者が急に増えだした頃には50%弱に増えた.殺虫剤耐性の蚊の割合が増えたことで薬剤浸漬ネットの効果が無くなったと示唆される.
2019.07.15 Monday

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11:17 | - | - | -

コメント

>例えば日本の本州、沖縄を含む南西諸島である。
特に、亜熱帯沖縄ではマラリアの被害はひどかった。これらの地域では媒介蚊を退治することによって病気を制圧できた。

本州では、たいしたマラリア対策をしていないのに、いつのまにかマラリアは消滅していますよ。

『ここで注目しておきたいことは、土着地方(←1934年〜1938年には、日本の富山県・石川県・福井県・滋賀県・静岡県で、日本全国のマラリア患者(年2万人程度)の約83%が発生していた。これらの地方のことである)においても特にマラリア予防のための服薬や環境の改善、戦後広く各国で行われているDDT残留噴霧の如き特別な対策は極く一部を除いて殆んど行われていなかった ことで、かかる減少の傾向(←日本の土着マラリアが激減した傾向のことである)が知らず知らずの間にかなり強力に進められつつあったことを知っておかねばならない。』

出典:、『ー医学の動向 第22集ー 地方病研究の動向』(金原出版。昭和33年11月20日発行)p 125の『わが国において第二次世界大戦による輸入マラリアが土着性とならなかった理由について』(新潟大学 医学部 医動物学 教室 教授 大鶴 正満)
2008/08/13 10:29 PM by マラリア
マラリア撲滅の為の重要課題は、蚊を撲滅すること。蚊だけが感染するウイルスを作り、蚊を消滅させる。現在ミツバチが世界的に消滅している原因がウイルスによるものという説があるが、もしこれが証明されれば、ミツバチだけを殺しているウイルスということになり、これを応用して蚊だけを殺すウイルスも作れるはず。現在に遺伝子組み換え技術だったらできると思う。私自身、現在遺伝子組み換えウイルスを使って研究中だから、理論上は可能だと思う。早く世界からマラリアを撲滅したいですね!
2009/02/13 6:48 AM by バキュオラ
>マラリアさん
コメント有り難うございます.本州にもマラリアが存続していたという話しは大鶴先生から窺っています.此の講義は天皇陛下にもされているんですよね.

>バキュオラさん
生物学的方法は昔から検討されていますね.蚊に寄生する原虫のようなもの.野外蚊から分離されたウイルスや蚊を食べる蚊などなど。。。。
上手くいくと良いですよね.
蚊が媒介する病気はマラリアだけではありませんから.
2009/04/21 12:22 PM by 管理人

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